堀江広行
Horie Hiroyuki
専門
ロシア思想史(20世紀のロシア宗教哲学)、終末論
関心分野
ロシア哲学、特に19世紀の哲学者V・S・ソロヴィヨフに始まるロシアの「全一哲学」を研究しています。ライフワークは、V・S・ソロヴィヨフのソフィア論の継承者である哲学者、神学者S・N・ブルガーコフ(1871-1944)研究です。
ロシア哲学といってもなじみがないのではと思います。ある程度の年齢の方なら、白系ロシアの実存主義者として分類されることの多かったベルジャーエフやシェストフなどを思い起こされるかもしれません。あるいは、マルクス主義やその周辺のオルタナティブな社会思想系の思想家たち、すなわち革命前のロシア帝国の専制にたいする抵抗者としてのゲルツェンやチェルヌイシェフスキーなどの名前を思い起こされる方もあるかもしれません。
ソロヴィヨフに始まる「全一哲学派」は、ゲルツェンやチェルヌイシェフスキーなどの社会思想系の思想家たちの次の世代を代表するロシア哲学者たちです。
彼らは、なにか独自のロシアの思想的使命を求めて、20世紀初頭にロシアのオリジナルな伝統としてのロシア正教の宗教的伝統に依拠し、それを哲学の言葉で語ろうとした一団の哲学者を形成しています。こういった欧米とはことなる自国の民族的伝統に依拠して、世界に答えるような普遍的な価値を探す姿勢は、日本における京都哲学を生んだ西田幾多郎の試みにどこか似ているようにも見えます。
S・N・ブルガーコフは、この全一哲学派の中心人物のひとりです。司祭の家に生まれ、当初は、虐げられた民衆を救う使命に駆られ、マルクス主義の経済学者、思想家として出発しました。しかし、20世紀に入り、一種の宗教的改心を経験し、東方正教会の伝統を新たな言葉で語ろうとする宗教哲学者となりました。当然ながら、ロシア革命が起こると出国を余儀なくされ、ヨーロッパにその活動拠点を移しました。
全一哲学派の哲学者、思想家の多くがこのような同じような道をたどりました。ベルジャーエフも厳密には、全一学派には含まれませんが、このような社会的使命に燃えたマルクス主義者、宗教哲学者、国外追放というコースをたどったロシア哲学者のひとりです。
彼らロシアの哲学者たちの特徴は、外面的に見れば、ヨーロッパの対抗思想としてみずからを位置づけたことです。
しかし、内容的には、西欧の哲学や思想を「理性」の思想とみなして、それに対して、ロシアの伝統のなかに、この理性とは異なる「知」を追求しようとしました。このような「知」の探求が、一種の根源的な「一即全」の存在論を主張する「全一論」や、そして、正教教理を哲学的に読み替えて、旧約聖書の知恵「ソフィア」の理念を継承しようと試みた独特の「ソフィア論」に反映されました。
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学術研究のほか、メディアを中心とする日露の友好促進にも携わり、ユーラシアにも関心をもっています。